+00:00情報セキュリティ大学院大学の小林義樹と申します。
+00:09本日はこのような機会を頂戴いたしまして誠にありがとうございます。
+00:13私は主にアメリカの制度を中心といたしましてインテリジェンス組織のガバナンスのあり方に関する学術研究を行っております。
+00:21本日は現在御審議がなされております。我が国の新たな制度案に関しまして主に学術研究の立場から若干の所見を申し述べさせていただきたいと存じます。
+00:33大きく分けまして2つの点がございます。
+00:35第一は本制度改革案の学術的な意義についてでございます。
+00:39第二はその際に留意すべきと考えられる点についてでございます。
+00:44まず第一の点本制度改革案の学術的な意義についてでございます。
+00:49インテリジェンスの意義や機能に関する考え方は様々でございますが今般の改革案は一定程度アメリカを含む各国における先行事例の知見に沿った側面を有しているものと考えられます。
+01:01アメリカを中心とする学術研究におきましてはインテリジェンスとは政策決定を支援するものというふうに捉えられております。
+01:10こうした観点からはインテリジェンス機能の強化は政策決定の質の向上に資するものでありまた適切なインテリジェンスに基づく意思決定は後から検証可能な合理性を担保するこのことにつながると考えられます。
+01:25こうした頃からインテリジェンス機能の強化は政策決定に関する国民に対する民主的なアカウンタビリティすなわち説明責任の向上に資するものと考えられます。
+01:37例えばアメリカの歴史におきましてもいわゆる教科書事例ではございますが例えば1962年のキューバーミサイル危機における意思決定過程におきましてはCIAをはじめとするインテリジェンス機関はケネディ大統領の政策判断さらにはこうした政策判断に関する国民に対する説明こういったものを支援する機能を一定程度果たしたと評価されております。
+02:01逆に言えばインテリジェンス機能が不十分な場合安全保障に関する適切な意思決定が困難となり結果として国民に対する民主的なアカウンタビリティすなわち説明責任の十分な確保が難しくなることが懸念されるわけでございます。
+02:17さて学術的にはインテリジェンス機能の強化のためにはいわゆるインテリジェンスサイクルを回す適切に回すこのことが重要だと考えられております。
+02:27ここで申しますインテリジェンスサイクルとは単純化して申し上げるならば必要な情報を収集し分析し政策決定に役立てそしてその結果を次のインテリジェンス活動に反映させるこうした一連の循環を意味いたします。
+02:42その上で、インテリジェンスサイクルを適切に回すためには主に2つの点が重要と考えられております。
+02:49第一に、インテリジェンスの利用者である。
+02:52政策決定者がインテリジェンスに対するニーズいわゆるリクワイアメントというものを責任を持ってインテリジェンス部門に提示することでございます。
+03:01第二にそうしたリクワイメントを受けたインテリジェンス部門が統合された形で効率的に機能することでございます。
+03:10今回の法案におきましては国家情報会議の設置が前者にそして同会議の事務局である国家情報局の設置が後者にそれぞれ指するものと考えられます。
+03:21また、今般創設が検討されております。国家情報局はアメリカの国家情報長官室いわゆるODNIを参考とした制度設計であると推察されます。
+03:34アメリカのODNIは制度の創設からすでに約20年が経過しております。
+03:40ただこの間のアメリカのインテリジェンスコミュニティの統合機能につきましては一貫の一定の評価がなされているところでございます。
+03:49例えば分析機能の高度化インテリジェンス組織の透明性の向上こういったことに関するいわゆるインテリジェンス政策諸政策の推進などの成果が指摘されているところでございます。
+04:01我が国におきましても国家情報局の機能が適切に発揮されるのであればこうしたアメリカにおけるODNの場合と同様に一定の成果が期待されるものと考えられます。
+04:14以上が第一の点本制度改革案の学術的な意味についてでございます。
+04:19次に、第二の点留意すべきと考えられる点について申し上げます。
+04:24ここでは2点を御指摘申し上げたいと思います。
+04:27第一は制度の限界について第二は国民の理解の確保についてでございます。
+04:32まず第一の点制度の限界についてでございます。
+04:35学術上インテリジェンス機能のガバナンスに関しましてはいくつかの困難な論点が存在するというふうに考えられております。
+04:43例えばインテリジェンス失礼いたしました。
+04:46例えば政治によるインテリジェンスに対する民主的統制とインテリジェンスの客観性の維持このバランスあるいは否得性の確保と透明性や説明責任の確保の両立などでございます。
+04:59ここで申します客観性の維持の例としてはいわゆる政治家ポリティサイゼーションすなわち特定の政治的立場への配慮等によりインテリジェンスの客観性が失われることこのことの防止も含むものでございます。
+05:13こうした課題に関しましては各国において様々な制度的実務的工夫が積み重なれてきておりますがいくつかの学術研究におきましては制度の整備は最終的にはそれを担う人に依存するとの指摘がなされております。
+05:28例えばアメリカにおけるインテリジェンス研究の代表的な教科書であります。
+05:32ローエンタール博士の著作におきましても例えばインテリジェンスと倫理あるいはインテリジェンスにおける政策決定者の役割こういったことにそれぞれ独立の章が当てられておるところでございます。
+05:43こうしたことから制度の整備のみならずそれに関与する関係者一人一人のリテラシーや組織文化が重要である。
+05:51と考えられます例えばインテリジェンス組織において各人員のいわゆる出身象徴意識こういったものが強く残る場合には統合機能が十分に発揮されない可能性は残るわけでございます。また、政策決定者の側においてもインテリジェンスの限界の理解あるいは利用者としての責任の自覚そしてインテリジェンス活動の秘密保持への配慮そして党派的利用の抑制こういった点などが求められると考えられます。
+06:21次に、第二の点国民の理解の確保でございます。インテリジェンス機能強化の意義につきましては必ずしも十分に国民の理解が得られていないのではないかあるいは誤解が存在するのではないかとの御指摘もございます国民からの理解の不足は中長期的にはインテリジェンス組織あるいは活動の正当性いわゆるレジティマシーにネガティブな影響を与えその機能の低下につながる可能性も否定できません他国の例を見ますと例えばアメリカにおきましては2013年のスノーデン事案等を契機といたしまして先ほど申し上げましたodniのリーダーシップの下インテリジェンス活動の透明性向上のための取組が進められております。また、イギリスにおきましてもインテリジェンス組織幹部による対外説明の充実等の努力が図られておるところでございます。各国の制度はそれぞれの政治社会状況に依存するため単純な比較は困難ではございますがこうした各国の取組は我が国においても一定の参考になるものと考えられます。
+07:26加えて今後仮に我が国におきましても対外インテリジェンス活動あるいはカウンターインテリジェンス活動を含めてインテリジェンス活動のさらなる拡充が議論される場合におきましてはインテリジェンス組織の透明性の確保に加え議会行政府第三者機関等による民主的統制のあり方に関しましても我が国の政治的社会的状況を踏まえつつ慎重かつ十分な御議論が尽くされることが一向に当たりするものと考えられる次第でございます。以上、私からは本日本制度改革案の意義という意見に関しまして学術的な観点からの所見を若干申し逃げさせていただきました。本制度改革案はインテリジェンス機能の強化を通じて政策決定に関する国民に対する民主的なアカウンタビリティすなわち説明責任の向上に資する可能性を有すると考えられます。
+08:16他方でその効果を十分に発揮するためには制度の設計はもとよりそれを運用する人材の在り方や国民の理解の確保といった点にも十分な配慮が求められると考えられます制度の整備とそれを支える運用理解の双方があって初めてインテリジェンス機能は適切に機能するものと考えられる次第でございます。
+08:35御清聴どうもありがとうございました。
+08:37以上でございます。
+08:37ありがとうございました。
+08:40次に、大沢参考人にお願いいたします。